
【最初の一歩】ミックスの基本の手順とコツ
最終更新日:2023/03/27
DTMで作った曲を完成させる上で、ミックスは欠かせないプロセス。
ですが、
「ミックスってなんか難しそうだし、何したらいいかわからない」
という方もきっと多いはず。
安心してください!それはミックスの本質的な目的と具体的な作業を知らないからです!
そこで今回は、まずミックスの基本的な手順を解説しながら、上達させるためのコツについても紹介していきます。
結構ボリュームがあるので、少しずつ読んでいただけると幸いです。
それではみていきましょう!
目次
そもそもミックス・ミキシングとは?

ミックスとは、複数の楽器のトラックのボリュームや左右の位置などを調整して一つの曲としてまとめる作業のことです。
ミックスでは主に4つの要素を調整していきます。
- トラック毎の音量や左右の位置
- 楽器の周波数帯域の調整や他楽器との重なり
- ダイナミクスと呼ばれる音の強弱
- 楽器の前後の位置や奥行きを決める残響
ミックスは各楽器をバランスよく混ぜ合わせて曲として完成させる作業ですが、最終的な目的は作曲者の世界観により近づけること。
自分でミックスを始めてみるまでは気付けないのですが、ミックス次第で曲の印象がガラッと変わります。
また音のバランスを調整すると聞くと簡単なようですが、ミックスは慣れるまではなかなか難しい作業。
ここからはミックスの基本の流れと気をつけるポイントを抑えていきましょう!
まず最低限、DTM用スピーカーだけは用意しよう

ミックスは音のバランスを整える作業。
そのためミックスをする環境で音が正確に再生できないのでは、きれいにバランスを整えることはほとんど不可能です。
こだわるとお金のかかる部分ですが、最低限DTM用のスピーカーを用意すればokです。
具体的には以下の点に注意しましょう。
- DTM用のスピーカー:一般的なスピーカーはウーハーなどで低音が強調されすぎていたり、聞こえない音域があります。フラットに音を再生できる特性のものを選びましょう。できればヘッドフォンよりスピーカーが◎
- スピーカーの配置:スピーカーは上から見た時に、自分と2つのスピーカーが正三角形になる用に配置しましょう。スピーカーと自分との距離が近すぎると低音が小さく聞こえたりするので、ある程度自分から離す必要があります。
- ミックス時の音量:スピーカーを使っているとついつい大きい音で聞いてしまいがち。ただ大きすぎると①耳が疲れて長時間作業できなくなる②コンプでの圧縮が不十分なのに、いい感じに聞こえてしまう。といったデメリットがあるので、可能な限り小さい音量で作業しましょう。
リファレンスと方針性をばっちり決める

DAWを開く前に次の2点を準備しましょう。
- 曲の方向性を決める
- リファレンストラックを見つける
ミックスは正解のない、終わりのない作業なので、あらかじめ方向性と完成図を決めておくことが大切!
逆にここを決めておかないと、何度もミックスをやり直すことになるので要注意。
具体的には以下の点を考えましょう。
- 曲の方向性:オリジナリティの高いスタイルでも、ミックスするにあたって似ているジャンルや目指したいスタイルを見つけましょう。例えば「ボーカルにエコーが強くかかっていてバンドサウンドに溶け込むような曲」「キックがボーカルよりも強く感じるエレクトロな曲」など、より抽象的でもイメージを持っておくと◎
- リファレンス:似ているジャンルを見つけたら、目指す音楽に近い参考曲、リファレンストラックを探します。ここで見つけたリファレンスを参考に、各楽器の位置や各音域のバランス、リバーブ感などを調整していくことになります。
自分の失敗経験として、オリジナリティを出したいがために(そして探すのがめんどくさいので)、最初は参考曲を使わずにミックスをしていました。結果的に正解がわからなくて、何度もミックスし直してとても時間がかかってしまいました…。
もちろん1度参考曲なしで挑戦してみるのも良いと思いますが、楽器の配置などにはすべて理由があるので、先人のミックスを参考にした方が効率も良いですし、学びがあるのでオススメです。
ミックス準備・トラックの整理

ミックスを始める前に、トラックの整理をしていきます。
初心者ほどついスキップしてしまいがちなプロセスですが、プロの現場では絶対に省くことのない作業の一つ。
具体的にはすべてのトラックの以下の点を整理していきましょう。
- バウンス:ソフトシンセや打ち込みのドラムなどのMIDIトラックはトラックごとにバウンス(MIDIからオーディオトラックへ変換)しておきましょう。ミックス時のCPUの消費を極力抑えるためです。この時ドラムはキックやスネアなどパートごとに分けて書き出しておくのがポイント。同じ楽器でも高音と低音が大きく離れている場合は分けて書き出すとこのあとの処理がしやすいので◎
- 不要なトラックの削除:使っていないトラックは削除します。自分で作曲&ミックスする方は、ついミックスしながらトラックを追加しがちですが、一旦作曲は終了したと割り切るのも大切。
- リネーム︰「Kick」「Snare」「Bass」「Guitar1」など、わかりやすい名前をつけておきます。
- 並び替え︰関連度が高いトラックごとに並べ替えるのはもちろんですが、ある程度自分の中でテンプレを作っておくと効率よく作業できます。例えば、下からドラム、ベース、ボーカル、その他の楽器など。
- カラー:DTMのチュートリアルを見ているとやたらトラックごとに色をつけているものがありますが、それにもやはり理由かあります。同じ楽器に同じ系統の色をつけるなど、工夫すると一目でわかって効率的です。
ミックス開始!まずはトラック全体を聞き音量調整

では、実際にミックスを始めていきましょう!
まず最初に行うことは各トラックの音量調整です。
この時点ではざっくりとした調整でokなので、トラック全体を意識しながら音量を調整していきましょう。
ミックスでの音量調整では以下の点に注意します。
- ・基本的なルールとして、各トラックはもちろん、マスタートラックがクリッピング(0dBを超えてメーターが赤くなること)しないよう音量を調整します。ミックス完了時にマスタートラックが-6dBくらいの余裕を持たせられたらベスト。
- ・音量調整はリファレンスと比較しながら進めます。比較用プラグインを使って音域ごとにソロモードにすると効率が良くて◎
- ・具体的には、ソロモードにしたキックの大きさを合わせ、続いてキックが聞こえるように状態で同じ低音のベースもソロモードで調整。ギターやパッドなども次々追加していき、最後にメインとなる楽器、またはボーカルの音量を調整します。
- ・この段階ではざっくりで大丈夫です。リファレンスと比較すると、最初はキックが聞こえていたのにベースを入れてから聞こえなくなった、ボーカルとピアノが重なって聞こえにくいかも、など問題点を見つけられるとより良いミックスになっていきます。
参考までに、リファレンス比較用のプラグインはADPTR AUDIO Metric ABがおすすめ。ミックス中の曲とリファレンスを音域や広がり、音圧など様々な角度から比較できます。
パンニングで広がりを出す

ざっくりと音量調整したあとはパンニングです。
パンニングとは、各トラックの左右の位置(パン)を調整することです。
ミックス中のパンニングではある程度のセオリーが存在します。
- キックやベースなどの低音:曲の基盤となる低音のトラックは基本的には中央にズシン、と配置します。
- ボーカルなどの主役:こちらも中央に配置することが多いですが、あえて左右に振って奥行きを出したりすることも。リファレンスを参考にしてみましょう。
- その他のトラック:左右に配置していきます。左右で音域に偏りがあると曲のバランスが悪く感じるので、同じくらいの帯域の楽器を配置していくのがコツ。こちらもリファレンスを参考にしましょう。
これらはあくまでもセオリーなので、とにかく最初はリファレンスを参考に曲を左右に配置していきましょう。
ミックスの壁・イコライザーで周波数を整理しよう

パンニングで楽器を配置したら、次はイコライジング。
イコライジング(EQ処理)とは、トラック毎の周波数帯域をイコライザー(EQ)とよばれるエフェクトを使って調整していく作業です。
EQ処理では以下の点に注意します。
- EQの基本は不要な音域を削ることです。
- 逆に特定の周波数を増やすことをブーストといいます。必要な音域をブーストすることで音が強調されて目立ちますが、せっかく調整したレベルが崩れるので慣れるまでは削る作業を中心に行いましょう。
スイートスポットをEQ処理
トラック毎にソロモードにして、不要な音域を削っていきましょう。
ミックスの中でも地味な作業ですが、とても重要な作業です。
手順は、
①1つのトラックをソロモードにする。
②パラグラフィックEQを挿入する。
③シェイプにbellを選んでQを最小、ゲインをmaxにしたバンドを追加してバンドをソロモードにする。
④バンドを低音から少しずつ高温へ動かしていき、キンとなったポイントがスイートスポットと呼ばれる音の集まった部分。
⑤ここをカットすると音がスッキリします。5dB以内にするなど、やりすぎには注意しましょう。
- マイクで録音したトラックは200-600Hzあたりにもっさりする部屋の壁の反響
- ボーカルなら4kHzあたりに歯擦音(サ行の音)
- ギターなどの楽器はクセで大きめに出ている音域など
こういった不要な部分を、この段階では意識的にカットしましょう。
音域の重なりをEQ処理
トラックの不要な部分をカットしたら、次はトラック全体を聞いて重なっている音域をカットしていきます。
重なっている音域を一発で教えてくれて、先ほどのスイートスポットも指摘してくれるproQ3のようなプラグインを使うのが効率的でおすすめですが、
人力で進める場合でも、慣れるまではスペクトラムなどを参考に、楽器ごとの音域を一度視覚的に認識すると段々コツがわかってきて良いです◎
今回のEQ処理は音域ごとに行うため、超低音(sub)・低域・中域・高域のそれぞれが大体何Hzくらいか頭に入れておくと作業が捗ります。
- 超低音(Sub):約20Hz〜60Hzの低い周波数帯域。Subは人間の耳では聞き取りにくい低い音ですが、迫力や深みを与える重要な音域。
- 低域(Low):60~300Hzの低い周波数帯域。主にキックやベースなどが含まれます。低域は音楽の土台。曲の雰囲気も担う重要な音域です。キックやベースの最も低い成分がSubに含まれます。
- 中域(Mid):300~3kHzくらいの周波数帯域。主にスネアやギター・ピアノ・ボーカルなどが含まれます。メインの楽器が多く集まる音域なので注意深く音域を削っていく必要があります。
- 高域(High):3kHz以上の高い周波数帯域。高域は曲の明暗をになっていて、高域をカットするほどダークなサウンドになっていきます。ボーカルの空気感などもHighに含まれ、ブーストすると近くで歌っているような臨場感が出ますが、やりすぎるとキンキンするので注意が必要です。
参考までに、おすすめのEQはFabfilterのProQ3。
これからミックス用プラグインの購入を検討している方には、全プラグインの中で一番最初に検討してほしいチート級プラグイン。
コンプレッサーでダイナミクスを調整する

EQ処理の次は、コンプレッサーによるダイナミクスの調整です。
コンプレッサーとは、トラックの音量の差を調整するエフェクトです。大きすぎる音を圧縮することで、相対的に小さい音やディテールを目立たせることができます。
逆に小さい音を持ち上げるリミッターと呼ばれるエフェクトもあります。
パンを使うと音を左右に振れますが、コンプをかけることで、音を手前に配置することができます。
コンプレッサーでのポイントは以下の通り。
- うまく使うと小さくて埋もれていた音を引っ張り出せるため、音にディテールを付加できる。
- 音量の差が均一になる反面、かけすぎるとのっぺりするのでかけすぎは禁物。
コンプは大きく分けると4種類(FET / OPT / VCA / TUBE)あり、それぞれ使う楽器や効果が変わってきます。
リバーブで奥行き、ディレイでなじませる

ここまできたらミックスの手順も残りわずか。
ダイナミクス調整後は、リバーブやディレイを使っていきます。
- リバーブ:残響を加えるエフェクトです。トンネルや浴室で音が響くようなイメージ。
- ディレイ:エコーを加えるエフェクトです。やまびこなどのように音が返ってくるイメージ。
リバーブやディレイでは以下の点に注意します。
- ・コンプと反対に、リバーブを強くするほどトラックが奥に引っ込むので、楽器の位置を意識しながらかけていきましょう。ミックスはサジ加減が大切。
- ・リバーブはプレディレイ(リバーブの残響が返ってくるまでの時間)の設定を忘れないようにしましょう。BPMに合わせて設定するのがベスト(BPMに合わせた計算方法はこちら)
- ・ディレイを短めの時間で薄くかけることで、トラック同士を馴染ませることができます。ボーカルやスネアが浮いているときはこうしたディレイを少しずつかけてなじませると良いでしょう。
- ・リバーブとディレイは、センドリターンで使いましょう。センドリターンとは、各トラックにエフェクトを使うのではなく、各トラックから一つのエフェクトトラックに送る&エフェクトのかかった音をマスタートラックに返すという方法。これにより、CPU消費が抑えられる上、全体的に統一感や自然さが出ます。
参考までに、おすすめのリバーブはNeoVerb。
おすすめのディレイはEchoBoyです。
立体感や動きの演出

いよいよミックスの最終段階。
リバーブの残響と並行して、曲の立体感やトラックに動きを出していきましょう。
立体感とは、左右の音声信号に差があることで感じられる広がりやステレオ感のこと。
最終的なステレオ感はミックス完了後のマスタリング工程で行いますが、ここではトラックごとの調整をしていきます。
例えばソフトシンセのコード弾きは単調になりがちですが、周期的に左右へ音を振ったり、微量にピッチを変化させ動きをだすことで飽きないサウンドを作ることができます。
こういった動きを出すには、下記のような方法があります。
- 音を左右に振る:オートメーションを使ってパンを動かす。トレモロ・フェーザー・フランジャーなどのプラグインを使う。
- ピッチを変化させる:カセットやレコードを再現したプラグインで音に揺らぎを出す。リングモジュレーターやコーラスのDepthなどをオートメーションで変化させる。
ミックス完了→マスタリングで奥行きと音圧調整

マスタリングとは、ミキシングされたトラックに対して最終的な調整を行う作業。
音圧が足りない、奥行きがほしい、などはマスタリングの工程で問題を解消していきます。
そのためミックス段階では音量は足りないくらいで大丈夫です!(目安は-6dB)
今回は説明を割愛しますが、マスタリングでは以下の点に注意します。
- 全体の音量や周波数特性、ダイナミクスレンジを意識する。
- 異なる再生環境でも安定したサウンドにするためにスマホなど様々な端末で再生したり、モノラルチェックでパンと位相の問題を確認します。
- リファレンスと比較しながら同じくらいの音量・音圧、ステレオ感になるように調整します。
いずれマスタリングについても詳しく解説したいと思います!
まとめ
いかがだったでしょうか。
DTMでのミックスの基本手順と、上達するためのコツでした。
ミックスは難しいイメージがありますが、慣れてしまえばDTMの中で一番楽しい作業!
今回触れなかった音抜けや、サチュレーションに関してはこちらの記事で解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
それではまた次回!